WORKS

神南一丁目オフィスビル再生計画

是正・減算による施工誤差と都市に与えるゆらぎ

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神南一丁目オフィスビル再生計画

是正・減算による施工誤差と都市に与えるゆらぎ

築40年の飲食ビルの再生計画である。既存建物は渋谷駅から徒歩10分、周辺には渋谷区役所、国立代々木競技場、NHKホールが建つ。再開発が進む渋谷らしい活気をもちつつ、明治神宮や代々木公園へと繋がるエリアに位置し、渋谷の顔に当たる場所である。既存建物は飲食店舗として新築された開口のほとんどない建物で、以後、外観へのルーバーの設置など幾度も改修が繰り返されていた。建物のコンディションとしては、旧耐震の建物であり現行の耐震基準を満たしていないことや、既存躯体へ張り付けられた湿式石貼りの剥落、確認申請の履歴のない違反増築等が見受けられ、継続して使用するのは難しい状態であった。渋谷では様々な需要用途が移り変わっている。建物を取得したクライアントからは、地階の飲食店舗を残したまま、居ながらによる耐震改修だけでなく、事務所ビルへの用途変更を行い、遵法性・建物性能を担保した上で活用できるようにすることが求められた。

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渋谷駅から徒歩10 分、周辺には渋谷区役所、国立代々木競技場、NHK ホールが建つ。再開発が進む渋谷らしい活気をもちつつ、明治神宮や代々木公園へと繋がる交差点に位置し、渋谷の顔に当たる場所に位置する。

 

既存建物は飲食店舗として新築された開口のほとんどない建物で、以後、外観へのルーバーの設置など幾度も改修が繰り返されていた。建物のコンディションとしては、旧耐震の建物であり現行の耐震基準を満たしていないことや、既存躯体へ張り付けられた湿式石貼りの剥落、確認申請の履歴のない違反増築等が見受けられ、継続して使用するのは難しい状態であった。渋谷では様々な需要用途が移り変わっている。建物を取得したクライアントからは、地階の飲食店舗を残したまま、居ながらによる耐震改修だけでなく、事務所ビルへの用途変更を行い、遵法性・建物性能を担保した上で活用できるようにすることが求められた。既存建物の増改築履歴の是正と新設開口時の外壁の斫りによって生み出される施工誤差から生まれるゆらぎを使って建物を再生することを試みた。

本計画は、躯体への開口の新設と、後付けルーバーや湿式石張りの除却、二つの予件が求められた。

一般的に躯体に開口を設ける際、カッターと躯体の斫りによって開口を設けるが、その解体の作法として「斫りのディテール」をファサードデザインに反映させるため、外壁躯体ラインの内側にサッシュを取り付けるインセットサッシュのディテールを考案した。

さらに、改修が重ねられていた外壁には、ルーバーや湿式石張りの除却によってあらわになったモルタルが精度の悪い下地として残った。荒く残った躯体は、下地材で使われる左官処理によって仕上げた。クラックの入らない下地材として使用する強固な素材を、あえて仕上げとして使用することで外壁材が剥落することもなく、コンクリート躯体や湿式石貼りの残ったモルタルの表情を拾ったもともとこの場所にあったような外観を実現した。既存躯体の履歴や与件の変遷をそのまま外壁に発露させた再生建築ならではの空間としている。

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通常、新築のRC 壁にサッシュを取り付ける場合、抱きを設けることで止水をとっているが、改修設計の場合は抱きをつくることが難しいため、止水はシールに頼ることが多い。
本計画では、外壁はクラックの入らない下地材を設けるだけでなく、サッシュを躯体からインセットさせ抱きと同様の形状とすることで、止水上有利な納まりとしている。 同時に、はつった外壁をそのまま意匠とすることができ、「開口を設ける」ことによる普遍的なオフィスビルのファサードをはつりにより生まれた「ゆらぎのような誤差」をそのまま映し出すようなデザインを実現している。

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増改築の変遷を発露するように再生された既存ビルを背景に、再生後はAmazon Musicが一棟借りで入居。内装はレコーディング・ライブ配信スタジオを主とした複合施設のために計画された(内装設計監理 TORAFU ARCHITECTS トラフ建築設計事務所

CREDIT
撮影:Kenta Hasegawa|TOP, 03 – 10 Ewix Inc. 永江一弘|02 楠瀬友将|01,11

 

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